仕事の効率化は多くの企業にとって課題といえるでしょう。時代とともに働き方に対する考え方は変化し、長時間ではなくいかに効率的に働き、心身ともに健康であることが重要になっています。
そこでパワーナップ（Power Nap）が注目され、取り入れる企業が出てきました。
今回はパワーナップについてメリットや効果、実践方法について紹介します。
パワーナップの基礎知識
パワーナップとは、社会心理学者ジェームス・マース氏が提案した日中に15～30分程度の仮眠を取ることで疲労回復やリフレッシュを促す方法です。
Google、Apple、Nikeなど世界的企業では、オフィスに仮眠スペースを設置したり、睡眠装置を置いたりなどして積極的に推奨しています。
数十分の昼寝で様々な効果が期待できるので、積極的に取り入れていきましょう。
パワーナップの効果
パワーナップには以下の効果があります。
疲労回復とリフレッシュ
パワーナップは、短時間の仮眠によって疲労を回復させ、身体と脳をリフレッシュします。
集中力と注意力の向上
パワーナップを取ることで、集中力と注意力が向上します。短い睡眠時間でも脳がリセットされ、より効率的に作業に集中できるようになります。
学習能力の向上
パワーナップは学習能力の向上にも役立ちます。睡眠中に脳が情報を整理し、記憶を定着させるため、学習した内容をより効果的に取り入れることができます。
ストレス軽減
パワーナップはストレス軽減にも効果があります。休息をとることで心身の緊張がほぐれ、リラックス状態に入ることができます。ストレスが軽減されると、メンタルヘルスが改善されます。
創造性の刺激
睡眠中に脳は創造性を高める働きをします。パワーナップを取ることで、新しいアイデアの生成や問題解決能力の向上が期待できます。
以上が、パワーナップの主な効果です。
効果的なパワーナップを取ることで、仕事効率やパフォーマンスの向上、ストレスの軽減、創造性の刺激などさまざまなメリットが得られます。
どうしてパワーナップで疲労回復できるのか
パワーナップで疲労回復できる理由は、睡眠のメカニズムが関係しています。
眠りの深さをあらわす言葉でレム睡眠とノンレム睡眠があり、パワーナップでは睡眠の深いノンレム睡眠で目を覚ますことになります。
ノンレム睡眠には4つのステージがあり、入眠20分ほどで訪れる軽い睡眠レベルのステージ2は、脳内のキャッシュ・メモリがクリアされて、優先順位をつける脳のワーキングメモリが強化されるそうです。
パソコンやスマホで、動作が重くなった場合ブラウザのキャッシュクリアを行うことで動作が軽くなるように、パワーナップの間に脳のキャッシュがクリアされるわけです。
これにより、短時間の睡眠でも頭がスッキリ冴えわたるのです。
ただし、30分以上の仮眠はステージ4まで進み、深い眠りになってしまいます。すると、寝覚めが悪く、ボーっとした状態に。
パワーナップは短時間で済ませることが大事なのです。
パワーナップの適切な時間帯
パワーナップは、正午から午後の3時くらいの時間帯に行うのが一般的です。
この時間帯は、昼食後に起きる眠気のピークがあり、仕事の集中力やパフォーマンスが低下しやすい時間帯でもあります。
そのため、この時間帯に短時間の仮眠を取ることで、午後の活力を取り戻し、仕事の効率を高めることができます。
パワーナップの効果的な方法
パワーナップの効果的な実践方法について紹介します。
パワーナップに適した場所とは
ベッドやソファ、リラックスできる椅子など、自分にあっていると思えばどこで仮眠をとっても構いませんが、できるだけ静かで、暗く、快適な環境を作るように心がけましょう。
光によって眠りを妨げられていると感じたなら、アイマスクの利用をおすすめします。
パワーナップの研究では、ホワイトノイズや雨音などのように自然に発生する背景雑音が、心を落ち着かせるとの結果も出ているそうです。
仮眠前のカフェインが効果的
コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン飲料は、飲んでから効果が現れるまで約20～30分かかります。
眠る直前にコーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン飲料を飲むと、仮眠から目覚めるタイミングでカフェインが働きスッキリ目覚められるでしょう。
座った状態で仮眠を
パワーナップは横になってしまうと脳が深い睡眠状態に入ってしまい、短時間で起きられないまま、長時間眠ってしまうと、体のだるさにつながる恐れがあります。
また、職場によっては横になる場所の確保が難しいケースもあるでしょう。
横にならず椅子にもたれたり、机に突っ伏して眠るのがおすすめです。
長時間眠ってしまうという人は、横にならないように姿勢に気をつけましょう。
アラームを設定する
30分以内に確実に起きられるようにアラームを設定しましょう。
30分以上眠ってしまうと深い睡眠に入ってしまい、起床時の倦怠感につながってしまいます。
また、寝すぎると夜に眠れなくなるなど、本来の睡眠と起床のサイクルに支障をきたす恐れもあります。
起きたら軽めのストレッチを
起きた後は体を伸ばしてください。窓辺で戸外の光を見たり、部屋の中を歩いたりしてもいいでしょう。
血流がよくなり、脳の働きも活性化します。状況が許すなら、顔を洗うのも有効です。
交感神経が優位に働いて無理なく仕事に入れます。
パワーナップの注意事項
次にパワーナップを行う上での注意点をお伝えします。
夜の睡眠とのバランス
パワーナップを行うにあたり、夜の睡眠とバランスをとることが重要です。
パワーナップは夜の睡眠を代替する方法ではなく、あくまで短時間の休憩として活用するようにしてください。
睡眠時間のバランスを保つためには、毎日決まった時間帯に睡眠をとることが大切です。
また、パワーナップは昼間に短時間の仮眠が効果的です。夜遅くのパワーナップは夜更かしの原因となります。
個人差による適切な時間帯や仮眠時間
人によって最適な時間帯や仮眠時間が異なるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。
最適な時間は昼食後とお伝えしましたが、人によっては午前中や午後の仕事の終わりに行う人もいます。
また、15分程度で充分な人もいれば、30分以上眠る必要がある人もいるので、自分にあった時間帯や仮眠時間を見つけるには試行錯誤が必要です。
眠れなくても目を閉じるだけでOK
パワーナップは眠ることが理想ですが、眠ろうとするとリラックスできず、目が冴えてしまうことがあります。
このような場合は無理に眠らなくても大丈夫です。
五感で感じる情報の8割は視角からとされているので、目を閉じるだけでも脳に伝わる情報の大部分をシャットアウトできて、脳を休ませることができます。
目を閉じて自分の呼吸に意識を向けるだけで十分です。
パワーナップの成功事例
世界的に有名な企業や誰もが知る偉人もパワーナップを取り入れていたとのこと。
パワーナップを導入していた偉人たち
後世に影響を与えた偉人もパワーナップを取り入れていました。
発明王として有名なエジソンは昼寝をしていたそうです。4時間以上寝ていると体調が悪くなると言っていたエジソンでしたが、睡眠時間を確保するために昼寝をしていたと記録されています。
3時間しか寝ていなかったナポレオンも、よく昼寝をしていたそうです。馬に乗りながら寝ていたという逸話も残っています。
「モナリザ」や「最後の晩餐」の作者として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチは4時間ごとに15分ずつ仮眠をしていたという逸話が残っています。
ザっと計算すると1日90分程度しか寝ていないことになりますが、ダ・ヴィンチは67歳まで生きていたとされているので健康的には問題なかったのでしょう。
パワーナップを導入している日本企業
宿泊施設のオンライン予約サイト「Booking.com（ブッキング・ドットコム）」では、秋葉原をイメージした休憩スペースがあり、休憩中の昼寝だけではなく、ゲームも許されているのだとか。
自由度が高く働ける会社といえます。
家計簿アプリの「株式会社マネーフォワード」では、執務スペースの中に昼寝スペースがあります。
寝るのはもちろん、ゴロゴロしながらの作業もできるそうです。
企業によるパワーナップ導入のメリットとは
企業がパワーナップを取り入れことで、以下のメリットがあります。
生産性向上
短時間で質の高い仕事をすることができるため、生産性の向上が図れます。また、疲労の蓄積によって発生するミスやノイズを減らすことができるメリットもあります。
従業員の健康管理
パワーナップは疲労の回復だけではなくストレス解消にも効果的です。
長時間のデスクワークによる健康被害を予防でき、従業員の健康にもつながります。
企業イメージの向上
パワーナップを導入する企業は、従業員の健康増進や働きやすい環境を提供しているというポジティブなイメージを与えられます。長期的にみると人材コストが下がることも期待できるでしょう。
競合他社との差別化につながり、ブランド力向上につながります。
まとめ
「仕事の合間に昼寝するなんてだらしない」というのは、今や古い考え方です。むしろ、仕事の効率化につながり、午後の仕事を集中して取り組むために積極的に昼寝をするべきといえるでしょう。
睡眠の質を高めることが重視される現代ですが、睡眠の量を確保することも大切です。
自分の睡眠時間を確保できないまま睡眠の質を高めようとしても、あまり効果的とはいえません。忙しくて睡眠時間を確保できないなら、ぜひパワーナップを取り入れてみましょう。
私たちの脳は思っている以上に疲れています。パワーナップは現代において効果的な健康方法といえます。
パワーナップによって脳のパフォーマンスが上がり、午後も快活にすごしやすくなるので、昼間に眠くて集中できない方はぜひ試してみてください。